こんな本を読みました。
読んだ本の紹介・感想・メモです。 画像をクリックすると Amazon.co.jp で本を購入できます。
アンリ・カルティエ=ブレッソン (「知の再発見」双書)
2014年12月10日 (水) 23:36 | 編集
アンリ・カルティエ=ブレッソン (「知の再発見」双書)アンリ・カルティエ=ブレッソン (「知の再発見」双書)
(2009/04/14)
クレマン・シェルー

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 「アンリ・カルティエ=ブレッソン ― 20世紀最大の写真家」(クレマン・シェルー/創元社「知の再発見」双書)読了。

 連続してブレッソンです。

 彼の生涯について詳しく知りたくなったので、これも読んでみました。

 写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの生涯が豊富な資料とともにコンパクトにまとめられています。

 ブレッソンの写真の成り立ちに重要な影響を及ぼしたのは、若き日に関わったシュルレアリスムなのだという。
 彼の写真を見ていると構図の完璧さのなかに、どこか地に足がついていないような不思議な感覚があるのを常々感じており、その謎がやっと解けたと思いました。

 こうしたシュルレアリストたちとの交際は、若きカルティエ=ブレッソンに大きな影響をおよぼすことになる。彼はシュルレアリスムから、直観、不服従、偶然、めぐりあわせ、そしてとくに、実際の体験、つまり人生そのものを楽しむ姿勢を学んだのである。(p.22)



 また、有名な「サン=ラザール駅裏」(本書の表紙の写真)が本格的に写真を撮り始めた直後、なんと初めてライカを買った年(1932年)に撮られていた、というのも意外な驚きでした。


 もっとも軽蔑している人物は? という質問にこう答えています。

 「軽蔑というものの存在を信じていない。人を軽蔑してはならない。そのように行動する理由を理解するように努めるべきだ。」(p.143)


 彼の人柄をよく表している言葉ではないでしょうか。


 本書の中には単なる作例としての写真作品の他に、ブレッソンの撮影した写真が雑誌等でどのように使われたのかも紹介されております。
 額縁に入ったかしこまった「作品」とは違った息遣いが聞こえてきます。

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15歳の東京大空襲
2010年07月18日 (日) 21:20 | 編集
15歳の東京大空襲 (ちくまプリマー新書)15歳の東京大空襲 (ちくまプリマー新書)
(2010/02/10)
半藤 一利

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 「15歳の東京大空襲」(半藤一利/ちくまプリマー新書)読了。

 数々の昭和歴史関連の著作を書いている作者が、若者向けに自身の戦争体験を綴っています。

 昭和16年(著者・国民学校五年生)の真珠湾攻撃から20年の終戦まで。

 東京は下町の向島区(現墨田区)生まれの、勉強よりも遊ぶことが大好きの悪ガキであった少年が、どんどん生活が窮屈になり、殺伐となっていく戦時下をどうやって生きぬき、何を考え、何を悩み、何に喜び、何を悲しんだか、のお話なんです。(p.17-18)



 開戦当初は割とのんびりとしていた世の中が、どんどん厳しい状況になってゆく。
 通学の途中で目にした光景など、体験者でなければ書けない描写が随所に見られます。

 そして、とうとう題名になっている東京大空襲がやってきます。
 新しく日本本土爆撃の総指揮官になった、カーチス・ルメイ少将は、ドレスデン空爆に強く影響され、軍事工場の破壊優先から「焼夷弾による都市攻撃」優先に作戦を変更しようと決断したのだという。
 当時の半藤少年の視点だけでなく、このような後年判明した日米両国の史実も挿入されていて、時代の流れを分かりやすく書いていらっしゃいます。

 昭和二十年三月十日、三百機以上の爆撃機が東京の下町の家屋密集地帯を爆撃しました。
 降りそそぐ爆弾の下、九死に一生を得た半藤少年の体験は、凄まじいものでした。

 とにかくものすごく強く北風が吹いていました。風にあおられた火の塊が、街から街へ、荒れ狂って飛んできます。それに真っ黒な煙のうず巻き。いわば道路は人と煙の洪水なのです。何十本もの火焔放射器でもしかけたように、ものすごい火の塊が地面を吹きとばされてころがってくる、空からかぶさってくる。(p.156)



 半藤少年は、必死で川岸の小さな広場に辿り着きます。
 火の勢いはすさまじく、小さな広場など無きに等しく、火の塊と煙が襲いかかってきます。

 それは凄惨この上なく、正に地獄の劫火でした。逃げ場を失って地に身を伏せる人間は、瞬時にして、乾燥しきったイモ俵に火がつくようにして燃え上がる。髪の毛は火のついたかんな屑のようでありました。背後を焼かれ押されて人々がぼろぼろと川に落ちていく。(p.157)



 戦争の真の恐ろしさを体験した半藤さんは、これからの人間はどのように行動すべきか、こう考えるようになりました。

 自分たちの生活のなかから “平和” に反するような行動原理を徹底的に駆逐すること、そのことにつきます。何よりも人間を尊重し、生きていることの重みをいつくしむこと、それ以外に戦争をとめる最良の行動はありません。ふだんの努力をそこにおくのです。はじまってしまってはそれまでです。はじまる前にいつもそのことを考えているべきなのです。(p.163)




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勇気ってなんだろう
2010年02月24日 (水) 21:22 | 編集
勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)
(2009/11/21)
江川 紹子

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 「勇気ってなんだろう」(江川紹子/岩波ジュニア新書)読了。

 他の人たちの発言や行動を聞いたり見たりして、「どうしたらこんなに勇気があるんだろう」とか「この人の勇気を私も少し分けてもらいたい」と思ったりすることが、よくあります。
 それで私は、その勇気に感銘を受けた人たちに、思い切って直接聞いてみることにしました。(はじめに)


 困難に直面しても、自分の信念を貫いたり、自分の失敗を素直に認めて人生をやり直したりした人たちに、江川紹子さんが話を聞いてきました。

 登山家、野口健さん。
 元国会議員、山本譲司さん。
 弟が北朝鮮に拉致された、蓮池透さん。
 現役警官だったときに、警察内部の裏金を実名で告発した、仙波敏郎さん。
 イラクで人質となり激しいバッシングを受けた、高遠菜穂子さん。
 イスラエルで占領政策に反対し、兵役を拒否したり、占領地の非人道的な実態を告発したりしている人たちにも直接取材されてます。

 新聞やテレビで報道されている表面の裏側に、いかに奥深い人間のドラマがあることか。

 自分の良心に従って生きるということは、何と難しいことなのでしょうか。

 自分なら本書に出てくるような局面で、どのように行動するだろうか・・・?

 岩波ジュニア新書ということで、中高生向に向けて書かれておりますが、大人にもぜひとも読んでもらいたい内容となってます。


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天才シェフ 危機一髪
2009年04月18日 (土) 22:17 | 編集
天才シェフ 危機一髪 世界一流レストランの舞台裏で起きた40の本当のお話天才シェフ 危機一髪 世界一流レストランの舞台裏で起きた40の本当のお話
(2008/10/23)
キンバリー・ウィザースプーン、

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 「天才シェフ 危機一髪 世界一流レストランの舞台裏で起きた40の本当のお話」(キンバリー・ウィザースプーン  アンドリュー・フリードマン / 日経BP社)読了。

 世界中の有名シェフが語った、厨房でのエピソード集です。
 ワシは詳しくないのですが、分かる人には分かるミシュランで星を獲得するような有名シェフばかりのようです。
 アンソニー・ボーデイン、フェラン・アドリア、マリオ・バターリ、ジェイミー・オリヴァーなど、聞いたことがあるでしょうか。

 準備していたものが直前に腐ってしまったり、お客がいっぺんに入って大混乱をきたしたり、他愛もない悪ふざけから、絶体絶命のピンチ、厳しい修行など、まさに涙あり笑いありの内容です。
 一つ一つの話が短くて読みやすいのもよいですな。
最強の狙撃手
2008年10月25日 (土) 21:54 | 編集
最強の狙撃手最強の狙撃手
(2007/03)
アルブレヒト・ヴァッカー

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 「最強の狙撃手」(アルブレヒト・ヴァッカー/原書房)読了。

 アマゾンで「極大射程」を検索したら、関連する商品っていうんですか、何冊かの本が自動的にリストアップされていまして、その中にあった一冊です。

 第二次大戦の東部戦線に従軍した実在のドイツ軍兵士、ヨーゼフ(通称ゼップ)・アラーベルガーを主人公にした、ノンフィクションです。

 ゼップは1943年7月初めに東部戦線に出征し、終戦まで戦い続けた後、捕虜になるのを恐れ歩いて故郷に帰り着きました。
 スターリングラードはすでに陥落し、圧倒的な勢力で攻めてくるソ連軍に対し、壊滅的な打撃を被りながら撤退に次ぐ撤退を繰り返す、凄惨な戦闘を奇跡的に生き延びるのです。

 狙撃兵について冷静に分析しているような内容ではなく、ゼップの悲惨極まりない個人的戦争体験をリアルに描いた作品です。
 読んでいて気分が悪くなるような描写が続き、覚悟してない人が読んでしまう恐れがあるため、引用するのも憚られるほどです。
 戦争中の暴力の嵐というのは戦闘の最中だけではなく、民間人や捕虜への虐待などに向かった時にさらに酷さを増します。
 本当に考えられないようなことを人間が人間に対してしてしまう。

 たまたま主人公が狙撃兵であったというだけで、本書の本当の主役は戦争という集団発狂の狂気そのものという印象が残ります。
 また、貴重な写真が多数掲載されており(損壊した死体も多数)、説得力を増しています。

 娯楽や暇つぶしで読むというのには不向きですが、戦争の悲惨さを学ぶよい教材であると思います。
 こういう本を読書感想文の課題図書にすべきじゃなかろうか。
わたしの失敗
2008年08月18日 (月) 10:55 | 編集
わたしの失敗わたしの失敗
(2006/05/29)
産経新聞文化部

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 「わたしの失敗 著名人の体験」(産経新聞文化部 編著/産経新聞社)読了。

 ワシは図書館でコレ借りましたが、今は文庫で出ています。
 さまざまな著名人の失敗談に的を絞ったインタビュー集です。
 産経新聞の連載を纏めたものだそうです。

 非常によくできた短編集を読んだあとのような、充実した読後感です。
 この人にこんなことがと、驚かされる裏話満載でした。
 今有名な人ばかりなので、ある種ハッピーエンドが約束された苦労話で、極度に暗くなりすぎないのもよいです。

 ワシなどは「天才」と呼ばれるような人は、大した苦労なしですばらしい作品をポンっと出し、それが手放しで評価され…みたいなもんなんだろと思いこみがちですが、不安にさいなまれたり、壁にぶち当たったりしているのですなぁ。

 たとえば、あの安藤忠雄がこう言う。

 「自分なりに必死で学び、力をつければ建築の仕事ができると信じていた。ところがまず、学歴や社会基盤のない人間を世間は相手にしてくれない。自分の力が通用するのかどうか悩んでも、相談できる相手もいない。絶えず心は不安でいっぱいでした」(p.104)



 思い込みと言えば、サッカーの釜本はメキシコ五輪で得点王にまでなり、海外からオファーもあったのに、なぜか外国に出て行かなかった。
 それは、釜本に勇気がなかったからだ。
 行っていれば日本のサッカー界の歴史も変わっていただろう。
 というコメントを昔TVで聞いて、ただ単純に「ああ、そうだったのか」と思っておりました。
 が、今回この本で、真相が分かりました。
 釜本はウイルス性肝炎にかかり50日間の入院。さらに、三年間毎週通院して薬が手放せない日々が続いたのだという。
 この所為で、海外クラブへの移籍と、W杯予選の二つの夢が消えてしまったのでした。

 何かを勝手に思い込んだり、人の無責任な言葉を丸飲みしてしまうというのは、とても危険なことです。反省。


 
ゴッホは殺されたのか
2008年05月28日 (水) 21:23 | 編集
ゴッホは殺されたのか 伝説の情報操作 (朝日新書 94) (朝日新書 94)ゴッホは殺されたのか 伝説の情報操作 (朝日新書 94) (朝日新書 94)
(2008/02/13)
小林 利延

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 「ゴッホは殺されたのか 伝説の情報操作」(小林利延/朝日新書)読了。

 衝撃的な題名です。
 題名の通り、ゴッホの他殺説について書かれた本です。

 本書は小説ではありません。
 著者は、誰でも読むことのできる「ゴッホの手紙」や、死後に発表された関係者の証言などから、推理を組み立てていきます。
 読み終わると、「こりゃ本当に他殺説を唱える他ないわな」 という気分に陥ります。
 「ダヴィンチ・コード」のような後味がありますが、繰り返して強調したいのは本書は小説ではないということです。

 ゴッホの人生を振り返りながら、最後に犯人を導き出すという構成ですが、冒頭に、ゴッホの自殺説がいかに胡散臭いかが解説されます。
 このプロローグがみごとで、ここを読んでしまうと、先を読まずにはいられなくなります。

 恥を忍んで告白しますと、ゴッホが自殺したという知識はありましたが、それがどういう状況であったかということを全く知りませんでした。
 耳を切った後の頭を包帯でまいた自画像のイメージが強烈であった為か、無意識のうちに、同じように室内で頭を撃って自殺したのであろう(耳を切ったのは室内)と、勝手に思い込んでおったのです。
 大部分の人はこの程度のイメージしか抱いていないのではないでしょうか。

 居合わせた人々の証言によると、滞在中の旅館からスケッチに出かけたゴッホが、夜になっても帰らず、心配していたところに、お腹を押さえながら戻ってきて、そのまま自分の部屋で寝込んでしまった。
 旅館の主が様子を見に行くと、傷口を見せたので、ガッシェ医師を呼んだ。
 ゴッホはすぐには死なず、知らせを受けて駆け付けた弟テオに看取られて死んだ。
 ということなのです。

 傷口についての記録を調べると、左脇腹から下を撃ったということで、自分で撃ち込むには非常に難しいというかほぼ不可能な箇所なのです。
 しかも、どこで撃ったのか、目撃者がいないのはもちろん、場所もはっきり特定されておりません。
 さらに、凶器のピストルが発見されておらず、入手経路も不明なのです。
 数日前に買ったという説がありますが、確実に証明されておらず、だいたいテオの仕送りに頼って、貧乏暮しをしていたゴッホにピストルを買うような金銭的余裕はありませんでした。
 ゴッホが自ら「自分で撃った」と語ったという証言がありますが、誰かをかばっていたとしたらどうなるのでしょう

 いやー、ざっと挙げただけでも、ゴッホの自殺説がいかにいい加減かおわかりになるでしょう。
 この実に曖昧な自殺説に、なぜ誰も疑問を投げかけず、事実として流布されてしまったのか
 これが本書の副題になっている「伝説の情報操作」であるわけです。
 本書には「他殺の証明」と、「他殺の隠ぺいの真相」という二つのテーマがあるわけです。

 で、犯人は誰なのか?
 それは本書の大切なクライマックスなので、書くわけにはいきません。
 興味の湧いた人は読んでください。



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株式会社
2008年03月23日 (日) 17:16 | 編集
株式会社 (クロノス選書)株式会社 (クロノス選書)
(2006/10/12)
ジョン・ミクルスウェイトエイドリアン・ウールドリッジ

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 「株式会社」(ジョン・ミクルスウェイト エイドリアン・ウールドリッジ/クロノス選書)読了。

 ズバリ、紀元前から現代に至る、「株式会社」の歴史です。
 単に株式会社というものの仕組みの変遷だけを書くのではではなく、時の社会や政府との関係、歴史の流れの中でどういう変化をしてきたのかを解説するという、ありそうでなかなか無い本です。

 当然のことですが、歴史や社会の制度と無関係に会社が存在するわけではありません。
 ですから、歴史の知識と企業制度の知識の両方がちゃんとある人物でないと、本書のような本が書けないのです。
 だから、ありそうで無い貴重な本っつー訳です。
 しかも、ワシのようなド素人でも読みやすい、簡潔な文章で、これまた貴重です。

 その昔ヨーロッパからアメリカやアジアに船を出すのは、とてもリスキーなことで、出発してちゃんと帰ってくるのは三分の一くらいのものだったそうです。
 この(現代でいえば)宇宙船を飛ばすような大プロジェクトに失敗した場合、借金を背負って一家離散とか刑務所に入れられたりとか、もうとんでもないことになってしまう。
 そこで、たくさんの人からお金を集めて、お金を出した人は自分の出したお金以上の損はしないという「有限責任」というアイデアが生れるのです。
 しかしこの頃はまだ会社の設立には国の特許が必要でした。(東インド会社などのように)。
 その後の会社法の改正と、産業革命による大規模な設備投資の必要性から、現代的な株式会社の制度が普及していった、という流れのようです。

 昔の話もおもしろいのですが、第二次大戦以降もまた楽しいっす。
 お馴染みの会社が実名でどんどん出てきて、それらがどのように発展したのか、はたまたエンロンのように破綻したのか、現代の株式会社の栄枯盛衰も読み応えがあります。


 
色の秘密
2008年03月07日 (金) 22:24 | 編集
色の秘密―最新色彩学入門 (文春文庫PLUS)色の秘密―最新色彩学入門 (文春文庫PLUS)
(2005/07)
野村 順一

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 「色の秘密 最新色彩学入門」(野村順一/文春文庫PLUS)読了。

 題名から連想すると、相当にお堅い本かと思ってしまいますが、全く違い、非常に読みやすいです。
 一言でいうと、「色に関するトリビアの羅列」か。
 「色」が人間の精神と身体にいかに多くの影響を与えるか、本当に驚くばかりです。

 例えば、色によって物の大きさが違って見えるという話。
 赤と青の自動車を同じ位置に置くと、人間の目には赤の方が7メートルも近くに見えるのだという。そのため、青い車は小さく見えるので、事故遭遇率が一番高いのだそうです。
 その理由がちゃんと科学的に説明されているのが面白いところ。

 赤は屈折率が小さいから、目の網膜より奥に結像する。そこで水晶体は網膜上に像を結ぼうとして、水晶体をふくらませて網膜に戻し、ピントを合わせる。その調節したぶんだけ水晶体が凸レンズとなるので対象物は接近し、膨張して見える。(p.60)

 青はその逆で、水晶体を薄くしてピントを合わせるために対象物は後退し、縮小して見えるというわけですな。

 また、「捨て色」という概念をはじめて知りました。

 数奇屋風の様式は茶室から和室に及び、日本人は色を見るための色を使う。色の数を少なく、明度や彩度も低めに抑え、茶器の渋さと帛紗(ふくさ)、茶室と和服の対比を生む。そのため茶室の色は「色を見るための色」すなわち「捨て色」になっている。(p.218-219)


 下着は白が一番良いそうです。
 白は大部分の放射線を透過して伝導するから、生命体が必要とする光が身体に届くからだそうです。
 白い下着を着れば風邪も治ると言い切ってます。
 逆に黒い布はすべて吸収してしまうのでよくないそうで、皺が増えるのだとか。

 光すなわち色は、皮膚と神経に作用し、さらに肺臓、肝臓、腎臓など、すべての器官系統に作用している。(p.65)


反省
2008年02月02日 (土) 21:57 | 編集
反省 私たちはなぜ失敗したのか?反省 私たちはなぜ失敗したのか?
(2007/06/15)
鈴木 宗男/佐藤 優

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 「反省 私たちはなぜ失敗したのか?」(鈴木宗男 佐藤優/アスコム)読了。

 「疑惑の総合商社=鈴木宗男」と「外務省のラスプーチン=佐藤優」の対談です。
 「反省」という題名ではありますが、本人たちが罪を認め、逮捕された事件を反省してます…という内容ではもちろんありません。
 彼らは無実の罪で捕まってしまった。
 それは何故なのか?
 事件の真相は?
 自分たちのどこに付け込まれる隙があったのか?

 「国民に対する説明責任を果たさないで、本当にすみませんでした。深く反省してます」(p.9)

 という意味での「反省」です。

 本書で明かされるのは、どれも「本当かいなっ」とにわかに信じられないような話ばかりです。
 検察が適当にシナリオを作って逮捕する、国策捜査。

鈴木 (取調べ中に検察官が)「世論に押されてやりましたが、マスコミに出たものではなに一つ事件にできませんでした。まあ、それが捜査というものです」と言った。カッときて「ふざけるんじゃない。最初から思い込みで逮捕したのか。国策捜査じゃないか」と声を荒げたら、「はい、権力を背景にしておりますので、そう受け止められるなら、そのとおりです」と言う。怒る気力も失せましたよ。(p.38)


 しかし、検察は外務省に利用されたにすぎないのだという。
 本当にひどいのは外務省で、秘密を知りすぎた鈴木宗男を排除する為の工作によりこの馬鹿馬鹿しい国策捜査となった。
 結局のところ、権力のメディア操作に検察だけじゃなく、ワシら国民も乗せられ、騙されてしまっていたようなのです。

 ひどい捜査の真相は本書のプロローグにすぎず、外務省の内幕を広く国民の皆さんに知ってもらおうというのが本当の目的のようです。
 これはおかしいっつーエピソードだけではなく、関係者もすべて実名で出てくるってのが凄い。しかも巻末に顔写真と略歴まで並んでいるのっす。
 この無能な連中が、単に税金を無駄遣いしている(それだけでも大問題なわけですが)だけではなく、外交でヘマをし続けて、日本の国益を損ない続けているという現実を直視しなくてはなりません。

佐藤 義理人情も恥も忘れた彼らは、同じ日本人として「ああ、この人は信頼できるな」と思えない人たちなんです。ところが日本人に好かれず、日本人が二度と会いたくないと思う人たちに、外国人と信頼関係を構築して、本当の外交交渉を展開することができるのか。できませんね。日本人が二度と会いたくない気持ち悪いヤツなんて、外国人だったら絶対、日本人以上に会いたいと思わないに決まってますよ。(p.266)


 話半分としてもこれは本当におかしいことばかりで、日本国民として一読しておくべき本ではないでしょうか。
 他人事ではありません。ワシらが住んでいるこの国の現実の話なのです。


リドリー・スコットの世界
2008年01月05日 (土) 21:54 | 編集
リドリー・スコットの世界リドリー・スコットの世界
(2001/04)
ポール・M. サモン

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 「リドリー・スコットの世界」(ポール・M・サモン/扶桑社)読了。
 映画監督リドリー・スコットの生い立ちから、「ハンニバル」製作途中までを綴った、とても面白い読み物です。
 著者はスコットと親しい人物で、スコットの肉声が多数収録されております。
 いろいろな裏話を知ってしまうと、どの作品ももう一度見直したくなってきます。

 リドリー・スコットというと、そのキャリアの初期に撮った「エイリアン」、「ブレードランナー」などSF映画の名作がすぐ思い浮かびますが、意外なことにスコットは「エイリアン」を撮るまでSFには興味がなく、知識もなかったとのだそうです。
 「デュエリスト/決闘者」という第一作目の映画は、ジョゼフ・コンラッド原作のナポレオン戦争時代のフランスの話で、第二作目としてなんと「トリスタンとイゾルデ」の準備に入っていた!
 しかし、時は1977年、スコットはチャイニーズ・シアターで「スターウォーズ」を観て衝撃を受けます。
 それと時を同じくして、20世紀フォックスの幹部がカンヌ映画祭で「デュエリスト/決闘者」を観て、スコットの才能に惚れ込み、彼に監督を依頼すべく、面白そうな脚本を探し始めるのです。
 そして、スコットの元に「エイリアン」の企画が持ち込まれるのでした。
 SF映画を「とてつもなく馬鹿げたもののように思っていた」(p.124)スコットがもし「スターウォーズ」を観ていなければ、「エイリアン」を撮る気になったでしょうか?
 偶然の巡り合わせで、あの名作が生れるわけっすね。

 さて、我々日本人にとって、スコット作品の中で最も思い入れの深いのは「ブラック・レイン」ではないでしょうか。
 更に言えば、「ブラック・レイン」イコール松田優作の映画であると考えている人も多いでしょう。
 本書の中でスコットの松田優作評があるので、引用します。

 「彼は、じつに痛快な日本のテレビドラマの主演で知られている、本質的にはコメディ俳優だった。たぶん、優作は大勢の女性ファンから愛されていた人気者だったろう。ともかく、日本では絶大な支持をうけていた男だ。個人的には、彼をどんなふうに感じていたかって じつに良いやつだったよ。正真正銘の、ナイス・ガイだった」(p.217)

 「ブラック・レイン」については、当初監督にポール・バーホーベンが予定されていたが降板したとか、コンクリン(M・ダグラス)が佐藤(松田)を殺してしまうシーンを撮影していたが、後で差し替えたとか、まあとにかくいろいろなトリビアが載ってます。

 リドリー・スコットに興味がない人でも、映画制作システムの舞台裏が垣間見られて、楽しく読めると思います。

写真家の現場
2007年12月16日 (日) 16:31 | 編集
 「写真家の現場―ニュードキュメント・フォトグラファー19人の生活と意見!」(土方正志/JICC)読了。

 写真家へのインタビュー集です。
 図書館をぶらぶらしていて見つけました。
 初版の発行が1991年ということで、本屋では見つかるかどうか分かりませんが。
 目次のラインナップをづらーっと書きます。
 気になる人がいれば、一読すると面白いかもしれません。

社会的風景を撮る―被写体に自分自身を見出す(鬼海弘雄)
「写真」を撮る―写真自体の魅力を求める旅(三好耕三)
建築物を撮る―解体と創造が折り重なる現場(宮本隆司)
核を撮る―見えない問題を透視するには(豊崎博光)
気を撮る―物に付着した気配を写す(喜多章)
アジアを撮る―釜ヶ崎からアジアへ向かって(山本将文)
日常風景を撮る―身辺を日記のように記録(太田順一)
ヌードを撮る―肉体の向こう側に見えるもの(高木由利子)
ルーツを撮る―元ボクサー・サベロンの奮戦!(砂守勝巳)
島を撮る―棄てられた島に物の原形を見る(雑賀雄二)
紛争地を撮る―ニュースを超えた私的な報道(長倉洋海)
東京を撮る―都市を因数分解する方法(瀬戸山玄)
里帰りを撮る―バンコク、ハノイ、そして東京(瀬戸正人)
民族を撮る―ゲリラとの生活で見た文化の深層(吉田敏浩)
乞食を撮る―路上の羅漢たちを追って(山中学)
同性を撮る―女たちへの共感を写真に託す(飯田典子)
ラテン・アメリカを撮る―アイアグア[いのちの水のありか](嵯上道正)
スポーツを撮る―競技場は劇場だ(築田純)
共産圏を撮る―ぼくらの世代のイメージを追う(ヤマグチゲン)

 私はできることなら写真一枚、一枚がそれ自体の世界を持って立ちあがることができ、しかもそれらが集まって一群になったとき、新たにコスモスとして表れるような写真を撮りたいと思っている。
鬼海弘雄 p.23



内臓感覚
2007年11月16日 (金) 22:32 | 編集
内臓感覚―脳と腸の不思議な関係 (NHKブックス 1093)内臓感覚―脳と腸の不思議な関係 (NHKブックス 1093)
(2007/09)
福土 審

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 「内臓感覚」(福土審/NHKブックス)読了。

 「過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome :IBS)」という病名を聞いたことがあるでしょうか?
 腹痛や便通異常が慢性的に持続するのですが、検査をしても器質的疾患が認められず、ストレスを受けると発症したり悪化したりするという病気です。
 「死ぬような病気じゃなかろう」、「検査で異常ないんだから、気のせい気のせい」などと甘く見てはいけません。
 怖くて電車に乗れなくなったりだとか、エスカレートすると失職や不登校にまで発展してしまう恐ろしい病気なのです。
 現代では(症状の軽重はありますが)ざっと五人に一人が罹っているというポピュラーな病なのです。
 自分でも心当たりがあるとか、そういえば知り合いにそういう人がいるとかありませんか。

 著者の福土さんはこのIBSのを長年研究してきた専門家で、国際的な診断基準を作成した機能性消化管障害国際ローマ3委員会委員という、とにかくそれなりに偉い人らしい。
 本書は、多少専門用語が出てきて、とっつきにくい所もありますが、最新の研究成果が盛り込まれた、比較的分かりやすい解説書になっております。

 ワシの印象では、今までIBSが語られる場合、ストレスなどの脳の問題が重点的に取り上げられることが多かったように思うのです。
 心理的要因が唯一つのIBSの原因だという前提で、いかにストレスと付き合うかなどという、あまり客観的でもなく科学的でもない、自己啓発の作文みたいなのを読まされることが多く、釈然としなさ感のみが残ってしまうのでした。

 本書の素晴らしいのは、脳と腸を同時に平等に扱っている点です。
 そして大事なキーワードの一つが「脳腸相関」です。

 動物の進化は腸からはじまった。腸の周りを神経細胞が取り巻いた。神経細胞があることで、腸の働きが効率良く調節できるようになった。やがて、脊髄ができ、その先端部がふくらんで、脳ができる。(p.9)


 脳と腸は繋がっており、お互いの情報をやり取りしているのです。
 しかも、腸やその他の部位から脳に入ってくる情報は、脳の情動形成にも深く関わっているのだという。
 つまりIBSが脳腸相関の病気であるということは、腸の症状であるのと同時に、体表的なストレス関連疾患でもある、という二つの側面を同時に持つということです。
 IBSはストレスなどの脳の中の問題が腸の症状になる場合と、もともと腸の感度が高い人が症状を発症し、それが脳に伝わって気分が落ち込む場合の二通りのパターンがあるということが、数々の研究で明らかになってきたのです。

 本書はIBSという病気の入門書ではあるのですが、同時に今まで知らなかった脳と腸の関係性が明らかになっていく過程をスリリングに読ませる、人体の新しい見方を発見する本にもなっており、非常に面白かったです。


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ナショナル・ストーリー・プロジェクト
2007年03月18日 (日) 22:03 | 編集
ナショナル・ストーリー・プロジェクト ナショナル・ストーリー・プロジェクト
(2005/06/29)
新潮社

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 「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」(ポール・オースター 編/新潮社)読了。

 この本はアメリカのラジオ番組から生れたものです。
 作家のポール・オースターがラジオのリスナーに物語を募り、全米から寄せられた物語の中から179編を選んだアンソロジーです。
 ワシがなんだかんだ書くより、まずはオースターが書いている序文を引用した方が、遥かに効果的なプロモーションになると思われるので、引用しまくります。

 オースターはまずラジオでこうリスナーに呼びかけました。

 物語は事実でなければならず、短くないといけませんが、内容やスタイルに関しては何ら制限はありません。(略)いままで物語なんて一度も書いたことがなくても心配はいりません。人はみな、面白い話をいくつか知っているものなのですから。この呼びかけに十分な数の人が応じてくれたら、きっとそれは、自分やたがいについて驚くべき事実を知る絶好の機会となるにちがいありません。このプロジェクトの精神は百パーセント民主的です。どなたからの投稿も歓迎します。送られてきた物語は私がすべて目を通します、と私は約束した。(p.10-11)


 そして、一年間で四千通を超える投稿を受け取ることになるのでした。

 私が読んだ四千の物語のうち、そのほとんどは最後の一語まで読みたくなるだけの力を備えていた。ほとんどはシンプルで率直な確信を込めて書かれていて、書き手にとって名誉にこそなれ少しも恥ではない出来だった。私たちにはみな内なる人生がある。我々はみな、自分を世界の一部と感じつつ、世界から追放されていると感じてもいる。一人ひとりがみな、己の生の炎をたぎらせている。そして自分のなかにあるものを伝えるには言葉が要る。(p.12)



 一つ一つの話が短いので、いちいち間を開けていたらいつまで経っても読み終わりません。
 結果、片っ端から読んでいくことになるのです。
 驚くような偶然とか、どうってことない話とか、ちょっといい話、暴力、悲劇、差別、貧乏、戦争体験・・・、頭の中がごっちゃごちゃになってくる。
 「人間は人間に興味がある」という言葉がありますが、まさにそれ。
 どの物語も興味深いのです。どんどん読まずにはいられない。
 意味のある人生、ない人生。語る価値のある話、ない話。・・・境界線があいまいになってゆく、というか、境界線なんてないんじゃなかろうかと思う。
 意味とは何か、価値とは何か?
 人間が存在すればその数だけ物語があり、語るべき内容、語るべき価値、人生の尊厳がある。


 それはそうと、ラジオといえば、「やる気MANMAN」が三月で終了しちまう。
 なんとも悲しいことです。
プロ論
2007年02月03日 (土) 22:10 | 編集
プロ論。 プロ論。
B-ing編集部 (2004/12/19)
徳間書店

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 「プロ論」(B-ing編集部[編]/徳間書店)読了。
 雑誌「B-ing」に掲載された巻頭インタビューを元に加筆・訂正したものだそうです。
 登場するのは各分野で成功した人たちばかり。

 求人情報誌に載ったインタビューだけあって、転職を勧める発言が多いのはご愛嬌か。

 転職経験がないことがリスクになるんです。転職できないことは、能力がないということになる。(成毛眞)

 全体に、人生において仕事とはなにか。今までどう考えて仕事に取り組んできたか、っつーことをみなさん発言していて、今現在このままでいいのか、とか、将来が不安だとかいう人にはいいアドバイスが満載だと思います。
 たまたま成功した人間が、適当に偉そうなこと言ってんだろ、というつっこみを入れたくなる人もいるでしょうが、そういう人に向けて、例えばこういう挑発的な発言があったりします。

 負け犬は群れるから、自分が負け犬であることに気づかない。例えば、著名人のインタビュー記事を見て、「こいつらは特別」「ちょっと運がいいだけ」と思う人がいる。同じ土俵に上がることすらしない。勝負する前から、もう負けている。 (高橋がなり)

 「好きなことや夢中になれることを続けていれば、必ずチャンスがやってくる」というのがほぼ共通したメッセージである、という印象がのこりました。
 簡単そうで難しいことだ。
 やはり成功した人は特別なのか。
 夢だけはでっかく持って生きたいですのぅ。

 この「プロ論」ですが「2」と「3」がすでに刊行されている模様です。
 これらも読んでみようかなー。
かみさま
2006年09月15日 (金) 22:39 | 編集
かみさま かみさま
大平 一枝・著
小林 キユウ・撮影 (2006/06)
ポプラ社

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 「かみさま」(大平一枝/ポプラ社)読了。

 本書の「かみさま」の「かみ」は神ではなく紙のことです。
 内容をどう説明したらよいものか
 手にとって立ち読みしてもらわないと、上手く伝わらないと思います。

 名刺、はがき、包み紙、切手など、普段たいして気にもとめない「紙」たち。
 ですが、そういった何気ない紙切れを大切に使っている人や、もの作りをしている人たちがいて、紙を巡る人と人との繋がりやドラマがあるんですな。
 小さなちょっとした薀蓄とか、ちょっといい話がたくさん詰まっていて、新しい世界を発見したーっという新鮮な感動がありました。

 人間国宝が漉いた和紙で作られた、五十枚三万円の名刺。
 若き日の父親が、外国から送ってきた絵葉書を巡る話。
 著者の製本ワークショップの体験。
 知り合いからもらった個性的で素敵なダイレクトメールのエピソード。

 どれもなんてことないんだけど、なぜがぐいぐい読ませる話ばかりです。
 小林キユウ撮影の写真もまた良し。

 物の価値というのは最初から物にくっついてあるのではなく、人の心が価値を見出して与えるものなのだなぁ。

 折り紙はもともと奉書や公文書、鑑定書に用いた紙のことをいい、ものごとの価値・資格などについての保障を表すための紙に使われていたそうだ。「折り紙付き」という言葉はそこからきている。(p.183)

へぇ~

黒澤 明 vs. ハリウッド
2006年08月12日 (土) 22:34 | 編集
黒澤明vs.ハリウッド 黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて
田草川 弘 (2006/04)
文藝春秋
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 「黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」(田草川弘/文藝春秋)読了しました。

 1970年に公開されたあまりパッとしない戦争映画、「トラ・トラ・トラ!」。
 この映画、最初、日本側シークエンスの演出は、黒澤明に依頼され、撮影途中で突然解任されたという出来事はよく知られております。
 客観的資料が散逸し、関係者も口を閉ざすという状況が長く続き、この出来事の真相は、長い間謎とされてきました。

 監督は辞任したのか、解任されたのか。黒澤は病気だったのか、病気ではなかったのか。もし病気でなかったのならば、どうして病気とされたのか。この混乱の責任は誰にあるのか。(p.20)


 本書はアメリカ側に残された資料を調査・研究することにより、これまで日本では等閑(なおざり) にされてきたアメリカ側の記録や証言を精査して日本側の証言と突き合わせ、日米双方の視点から、『虎 虎 虎』に懸けた黒澤明の夢と無念の軌跡を事実に即して辿ろうという試みである(p.23)


 「赤ひげ」の後、黒澤明はハリウッドで「暴走機関車」という映画を撮ることになっており、脚本も完成し、撮影寸前までいったのですが、黒沢側の都合で、お流れになってしまいます。
 「トラ・トラ・トラ!」の依頼が舞い込んだのはこの直後のことでした。

 本書の前半は、脚本の完成までの気の遠くなるような道のり。
 開戦に反対していた山本五十六が、真珠湾攻撃を仕掛け大成功を収める。が、それは眠れる巨人を起こす結果となり、祖国を滅亡の淵に追いやる端緒となってしまう。
 これをギリシア神話にも通じるような運命的な悲劇として描く、というのが黒澤監督の狙いだったのです。
 脚本を元にした黒澤の演出プランの描写を読んでいると「ああ、この映画が見たかった」と歯噛みするほど残念っす。

 「史上最大の作戦」で大儲けし、戦争スペクタクルという二匹目のどじょうをねらっていたフォックスと、黒澤の考えとは、最初から噛み合っていなかったといえるのだな。 

 本書の後半は、撮影中に起こった数々の事件と監督解任までを細かく検証してゆきます。
 「暴走機関車」を駄目にしてしまった、黒澤の弱気というか気の弱さ。
 プレッシャーに押しつぶされ、不眠に悩み、朝方まで飲酒して、酒の臭いをプンプンさせながら現場に来たという。
 突然倒れて、病院に担ぎ込まれたりする。
 かと思うと、些細なことでスタッフを怒鳴りつけ、怒りまくる。
 スタッフと対立し、ストまでおこされる始末。
 いつもの東宝のスタジオではなく、京都太秦の東映スタジオでの撮影で、スタッフは黒澤のやり方に慣れていなかったという不幸も重なるのであった。
 さらに、黒澤がこだわった、元海軍士官の素人俳優で主要キャストを固めるということの無理。
 己の思うように演技してくれないことに対するフラストレーション。

 日米の文化の摩擦というような話を想像していたのですが、この映画の解任劇に関しては、芸術家として感性が鋭すぎる黒澤が、どんどん自滅してゆき、悲劇的結末に突き進んでゆく・・・、という感じですか。

 悲劇を描くどころか、自らが悲劇の主人公になってしまったようなもんだ。

 黒澤の少し幼稚すぎるような傲慢さに対して、フォックスのプロデューサー、エルモ・ウイリアムズの人間としての大きさというか懐の深さが際立ってます。
 黒澤のわがままに偉大な監督として敬意を払いながら付き合い、解任後まで黒澤の名誉を傷つけないようにと心を砕く。
 アメリカ人というのは、もっとサバサバして、ビジネスライクな印象があったのだが、この人は特別なのだろうか。
 ちなみに彼は、「史上最大の作戦」でダリル・ザナックの右腕として働き、編集者として「真昼の決闘」で、プロデューサーとして「フレンチ・コネクション」で二度のオスカーに輝いています。

 自分が総監督であり、アメリカ側の撮影や編集にまで口出しできると思い込んでいた黒澤とフォックスとの契約問題など、映画の裏側や、日米の映画の作り方の違いなど、とても面白く読めます。

 あとがきで、著者と黒澤との関わりが明かされ、なるほどそれで本文中のあの話が書けたのかと、納得のいく仕掛けも用意されています。

 膨大なインタビュー、資料の発掘・整理など、丁寧に作られており、映画ファンの読み物としてまた資料として、非常に価値ある本であります。
嘘つき男と泣き虫女
2006年05月24日 (水) 22:10 | 編集
060524.jpg嘘つき男と泣き虫女(アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ/主婦の友社)読了。

 「話を聞かない男、地図が読めない女」の続編です。
 第一作が面白かった人は、本作も面白く読めるでありましょう。

 主に、人間の脳の仕組みから、男女の考え方や行動パターンの違いを分かりやすく解説してくれる本です。

 自分のパートナーの行動が理解できなかったり、喧嘩ばかりしているという人は、これを読むと「ああ、そうだったのか!」 と、目から鱗の事柄がいろいろ書かれていると思いますよ。

 そして、相手のことが分かるというばかりではなく、自分自身も、この本に載っているパターン通りに考えていることが多く、ちょっと驚かされます。
 オレ流だ、個性だ、なんだかんだ言っても、人間というのは、みんな、似たような考えかたをするもんなのだなー。

 この本では、科学的な裏づけのある確かな事実を、ユーモアをからめて分かりやすく説明している。パートナーや父親/母親、息子/娘、友人、近所の人など、あなたの 「反対側の性」 の行動がこれで解明できるはずだ。これを読めば、人間関係にまつわるすべての悩みが軽くなるだろう。(p.24)

  「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 などということわざもございます。
 くだらないことで揉める前に、一読をお奨めします。
ムンクを追え
2006年03月10日 (金) 17:23 | 編集
ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日
(2006/01/24)
エドワード・ドルニック

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ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日」(エドワード・ドルニック/光文社)読了。

 1994年、ノルウェー、オスロ。
 よりにもよって冬季オリンピック、リレハンメル大会開催初日に、ノルウェー国立美術館から、ムンクの代表作『叫び』が盗まれました。
 本作は、ロンドン警視庁の囮捜査官がこの『叫び』を取り戻すまでの物語を縦糸に、美術品盗難事件の歴史や、背景などに迫った、なかなか興味深いノンフィクションです。

 美術品の盗難というとあまりピンとこないかもしれませんが、本書によると、

 美術犯罪は、いまや、巨額の富をもたらす一大産業と化している。犯罪統計というのはあまり当てにならないものだが、国際刑事警察機構(インターポール)の推定によれば、盗難美術品の闇取引で動く金額は、年間四十億から六十億ドルにものぼるという。その規模は尋常ではなく、国際的な違法取引のなかでは、麻薬、武器についで第三位に位置している。(p.23)

 ということです。

 奪われた美術品のうち、無事回収されるのは一割程度というショッキングな数字も示されます。
 名画というのは値下がりすることがないので、あわてて売ったりしないそうです。
 ま、どこかに隠しているというのなら、まだ発見する可能性があるのでましなのですが、盗んだり、不法で入手した犯罪者が、その価値を理解できず、証拠隠滅のために捨てたり燃やしたりということもあるのだという。

 読んでいてビックリさせられるのは、盗難事件の発生件数の多さと、盗みのあまりの容易さです。
 単に警備が手薄などというハンパなもんじゃなく、そもそも警報装置がなかったとか、警備員がアルバイトだった、絵が簡単なワイヤーでぶら下っていたなどなど、誰でも知っている有名美術館でもとんでもなくお粗末なのです。
 1998年、ルーヴル美術館からコローの絵が盗まれた時の報告書には「三万二千点におよぶ展示物から一点を盗み出すのは、デパートで万引きするよりも、はるかに容易だ」と記されているそうです。
 保険金もほとんど掛けられておらず、警察も「たかが絵じゃなか」という感じで、あまり真剣に捜査しないという現実もあるのだとか。

 美術品盗難に関する記述の他、囮捜査の実態も興味深く読みました。
 特にベテラン囮捜査官で『叫び』を取戻した張本人チャーリー・ヒルというキャラクターが面白いのです。
 過去に、フェルメール、レンブラント、ゴヤ、ティツィアーノなどの名画を奪還している、まさに伝説の敏腕捜査官なのです。
 彼の人生哲学、潜入の手法など、まさに事実は小説より奇なりという感じ。

 美術好きな人とか、こういうちょっと変わった角度からの話も意外と面白いですよー。

 それはそうと、「ダヴィンチ・コード」の文庫を買うかどうか、悩んでます。
アースダイバー
2006年02月27日 (月) 22:15 | 編集
アースダイバーアースダイバー
(2005/06/01)
中沢 新一

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 「アースダイバー」(中沢新一/講談社)読了。

 縄文時代、東京はとんでもなく内陸まで海であった。
 東京の台地は複雑なフィヨルド状の海岸地形をしていたのです。
 その縄文時代の地図を持って、東京を歩くといろいろなものが見えてくるのだった。

 縄文人は海と陸の境に貝塚を作り、人も埋葬した。つまりその場所は当時の聖地なのだ。
 そして、聖地や古墳のあった場所には、やがてお墓や神社などが建てられ、現代でも特別な場所として存在している。
 つまり、縄文時代の霊的な力の影響が現代にも続いているのだ。

 うんうんと感心する部分や、どうにも妄想とこじ付けとしか思えない部分が渾然一体となっているのですが、全体を貫くイマジネーションの豊かさと、自然界や歴史に対する謙虚な姿勢など、中沢節炸裂で、読んでいて実に楽しい書物でした。

 人間の理性には、どうもなにかが決定的に欠けているらしいのである。「自然の理法」にはすんなり理解できていることが、人間の理性にはどうしたってわからないようなのだ。もちろん、理性は役にたたないと言っているわけではない。ただ、理性はどうも完璧じゃないらしいので、ぼくたちには見えないところで行われている地球の営みに、もっと耳をそばだてていないといけない、と言いたいだけだ(p.109)


 現代の超合理主義や拝金主義、科学万能主義に対する、本能的な嫌悪感とか疑問をなんとなくみんな感じていて、占いとかスピリチュアルなことなどが流行しているんじゃないか
 上手く言葉に出来ないもやもやの一部が、解明できたような気がします。

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