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寡黙なる巨人
2007年10月08日 (月) 17:37 | 編集
寡黙なる巨人 寡黙なる巨人
多田 富雄 (2007/07)
集英社

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 「寡黙なる巨人」(多田富雄/集英社)読了。

 著者の多田さんは高名な免疫学者です。
 2001年5月、突然脳梗塞(のうこうそく)で倒れ、死線を彷徨った後、右半身完全麻痺や、舌や喉の麻痺による摂食障害や言語障害などの後遺症が残ってしまいました。
 本書はその凄まじい闘病記であり、現在の医療問題に対する告発の書でもあります。

 医師である多田さんは冷静に自分の病を分析し、

 私の手足の麻痺が、脳の神経細胞の死によるもので決して元に戻ることがないくらいのことは、良く理解していた。麻痺とともに何かが消え去るのだ。普通の意味で回復なんてあり得ない。(p.40)


 と述べます。
 その上で、過酷なリハビリの結果、ほんの少しでも機能が回復すると、このような考えがひらめくのです。

 もし機能が回復するとしたら、元通りに神経が再生したからではない。それは新たに創り出されるものだ。もし私が声を取り戻して、私の声帯を使って言葉を発したとして、それは私の声だろうか。そうではあるまい。私が一歩を踏み出すとしたら、それは失われた私の足を借りて、何者かが歩き始めるのだ。もし万が一、私の右手が動いて何かを掴むんだとしたら、それは私ではない何者かが掴むのだ。(p.40)

 多田さんは自分の中で新しく生れたその何者かを、本書のタイトルである「寡黙なる巨人」と呼ぶのです。

 新しいものよ、早く目覚めよ。今は弱々しく鈍重だが、彼は無限の可能性を秘めて私の中に胎動しているように感じた。私には、彼が縛られたまま沈黙している巨人のように思われた。(p.41)


 前半のリハビリの過程は、体験したものでなくては書けないリアリティで圧倒されます。
 麻痺や嚥下障害がどれほどの地獄の苦しみであるか、想像を絶するものがあります。
 患者の視点から、現在の医療制度(特に科学的なリハビリのシステム)に対する問題点も深く掘り下げられております。

 後半は、発作後六年間に新聞や雑誌に書いてきた随想をまとめたエッセイ集になってます。
 特に力を入れているのは、2006年に開始された障害者のリハビリを180日に制限する「診療報酬改定」に対する戦いです。

 こうして私の中に生れた「巨人」は、いつの間にか、政府と渡り合うまで育ってくれた。死ぬことばかり考えて、生きるのを恐れていたころとは違う。今は何も恐れるものはない。(p.242)


 健康に生きているだけでも幸せなのに、日々、不平不満ばかりの自分を深く反省しました。
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