2010年07月18日 (日) 21:20 | 編集
![]() | 15歳の東京大空襲 (ちくまプリマー新書) (2010/02/10) 半藤 一利 商品詳細を見る |
「15歳の東京大空襲」(半藤一利/ちくまプリマー新書)読了。
数々の昭和歴史関連の著作を書いている作者が、若者向けに自身の戦争体験を綴っています。
昭和16年(著者・国民学校五年生)の真珠湾攻撃から20年の終戦まで。
東京は下町の向島区(現墨田区)生まれの、勉強よりも遊ぶことが大好きの悪ガキであった少年が、どんどん生活が窮屈になり、殺伐となっていく戦時下をどうやって生きぬき、何を考え、何を悩み、何に喜び、何を悲しんだか、のお話なんです。(p.17-18)
開戦当初は割とのんびりとしていた世の中が、どんどん厳しい状況になってゆく。
通学の途中で目にした光景など、体験者でなければ書けない描写が随所に見られます。
そして、とうとう題名になっている東京大空襲がやってきます。
新しく日本本土爆撃の総指揮官になった、カーチス・ルメイ少将は、ドレスデン空爆に強く影響され、軍事工場の破壊優先から「焼夷弾による都市攻撃」優先に作戦を変更しようと決断したのだという。
当時の半藤少年の視点だけでなく、このような後年判明した日米両国の史実も挿入されていて、時代の流れを分かりやすく書いていらっしゃいます。
昭和二十年三月十日、三百機以上の爆撃機が東京の下町の家屋密集地帯を爆撃しました。
降りそそぐ爆弾の下、九死に一生を得た半藤少年の体験は、凄まじいものでした。
とにかくものすごく強く北風が吹いていました。風にあおられた火の塊が、街から街へ、荒れ狂って飛んできます。それに真っ黒な煙のうず巻き。いわば道路は人と煙の洪水なのです。何十本もの火焔放射器でもしかけたように、ものすごい火の塊が地面を吹きとばされてころがってくる、空からかぶさってくる。(p.156)
半藤少年は、必死で川岸の小さな広場に辿り着きます。
火の勢いはすさまじく、小さな広場など無きに等しく、火の塊と煙が襲いかかってきます。
それは凄惨この上なく、正に地獄の劫火でした。逃げ場を失って地に身を伏せる人間は、瞬時にして、乾燥しきったイモ俵に火がつくようにして燃え上がる。髪の毛は火のついたかんな屑のようでありました。背後を焼かれ押されて人々がぼろぼろと川に落ちていく。(p.157)
戦争の真の恐ろしさを体験した半藤さんは、これからの人間はどのように行動すべきか、こう考えるようになりました。
自分たちの生活のなかから “平和” に反するような行動原理を徹底的に駆逐すること、そのことにつきます。何よりも人間を尊重し、生きていることの重みをいつくしむこと、それ以外に戦争をとめる最良の行動はありません。ふだんの努力をそこにおくのです。はじまってしまってはそれまでです。はじまる前にいつもそのことを考えているべきなのです。(p.163)
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